三島由紀夫の二・二六事件 (文春新書 475)

著者 :
  • 文藝春秋 (2005年11月18日発売)
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感想 : 12
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 二・二六事件から70年が経過する。それまでに読もうと思った一冊。著者の思惑としては、北一輝を補助線に、少年期に二・二六事件に遭遇した三島由紀夫の天皇観というか、自決へ到る心の軌跡を描こうとしたと考えられる。ところが、読後感としては北がメインになってしまっている感が否めない。その辺がこの著者らしいといえばそれまでだが。
 内容は大本教との関わりなどを含めて、なかなか興味深いのだが、やはり新書である。著者が北一輝・三島由紀夫、そして昭和天皇についてこれまで書いてきたものの重複部分を整理して水割りにした感じがする。しかし、うまい原酒で作った水割りはそれなりにうまい。だから読者は、より刺激を味わいたければ、それぞれの興味関心に沿って、それぞれの原酒(原典)に当たればいい。そういう意味でのイントロダクションにはなっている。
 しかし、ビックスの『昭和天皇』批判はともかく、昭和天皇は著者がいうほど平和主義的だったのだろうか?平和主義でないから戦犯だというつもりはないが、そこが読んでいて気にかかった。

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: ナショナリズム論
感想投稿日 : 2006年8月15日
本棚登録日 : 2006年8月15日

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