カール・シュミット-ナチスと例外状況の政治学 (中公新書 2597)

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  • 中央公論新社 (2020年6月22日発売)
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ナチス・ドイツや全体主義についての関心から、読んでみた。

といっても、シュミットは、大昔、大学で「政治学」の講義を受講したときに何冊か、課題図書として、読んだことがある。たしか、あれは学部生を対象とした「政治学」か「政治哲学の「入門」レベルの講座のはずだったのだが、やったのはホッブスとシュミットくらいだったかな?

今考えても、なんともマイナーな分野だったな〜。担当教官の専門領域の話を1年間聞いた感じ。たしか、先生はシュミットの主要著作を翻訳していた田中浩さんのはずだったけど、インターネットで調べるとわたしの在学中はいなかったよう。外部講師みたいな感じでの講義だったのか?

そんな記憶の彼方を探りつつ、このシュミットの入門書を読んでみると、あれ?私の政治的な思考の一部は、ホッブスとシュミットの問題意識からやってきていることがわかって、驚いた。やっぱ、その分野で学んだ最初のものって、なんだかの形で残っているんだなと思った。

さて、シュミットは、ナチの御用学者という悪名が高いわけだが、にもかかわらず、20世紀の偉大な政治哲学者として、認知されている。また、アガベンなどのポストモダーンな哲学でも、その思想を踏まえた議論がなされている。その辺のところの謎が知りたいわけなのだが、残念ながら、よく分からなかったかな?

この本では、シュミットの主要著作を当時の政治状況やシュミットの立場などの文脈を踏まえつつ、簡潔に紹介している。著者によると、論敵の問題点への切り込み、批判は鋭いが、代案という観点からは、今ひとつ、論理が明確でなかったり、自説を述べるときに自分が批判したものが紛れ込んでいたりするということ。

ポストモダーン的には、そうした論理一貫性を著者に求めても仕方がないのかもだが、シュミットはそういうタイプの思想家でもなさそうに。。。。モヤモヤする。

また、ナチスドイツとの関係も、たしかに一時は御用学者、ナチスの全体主義を理論化したのだが、徐々に、政治的なスタンスはナチスと離れていたとのことで、まあ戦犯というこにはならなかったが(そもそも学者であって、政治家ではなかったし)、その思想のコアな部分、つまり、ユニバーサルな原理原則より土地に根差した個別具体的な現実を重視する姿勢、そしてユニバーサルな思想はユダヤ人に関連されているという点において、ナチ思想の重要部分と同期しているわけで、この辺のところはあまり戦前戦後で変化していない。やっぱ、ナチズムにとても親和性の高い思想家であったと評価せざるを得ないと思う。(この問題は、シュミット同様、早々にナチに入党したハイデガーにも共通するもののように思う)

もう少し、シュミットが現代において、どうして重要なのか、そこのところをもう少し丁寧に説明してほしかったかな?

それにしても、この本は、2020年に出版されて、この類の本としては、結構、評判になった本だと思っていたが、どうしてだろう?

そこまでわかりやすい本でもないし。。。。

やっぱ、コロナがシュミットがいう「例外状況」だったという認識だったのかな〜。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月28日
読了日 : 2021年6月28日
本棚登録日 : 2021年6月28日

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