元型論

  • 紀伊國屋書店 (1999年5月1日発売)
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感想 : 16
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5〜6年くらい前にコーチングを学び始めてから、その理論的なバックグランドみたいな感じで、心理学、心理療法の本もあれこれと読んでいる。

そういうなかで、ユングは、なんだか神秘主義的な感じで、読まずぎらいしていたのだが、プロセスワークももともとはユング派だったわけで、最近の関心事の男性性/女性性の結合みたいなのも、ユング的な話しなので、入門書をこえて、ぼちぼちとユング自身の著作を読み始めている。

が、ユングの著作の膨大なこと。1冊1冊が分厚い。しかも、かなり難解でなに言っているのかわからない。

というなかで、自分の関心は、どうも「集合的無意識」「対立物の結合」みたいなところにあるようなので、その辺を中心に読んでいて、そういうテーマのコアとなる本は、この「元型論」らしいということで、苦労しながら、読んでみた。

といっても、これはいろいろなところに発表された論文やエッセイを集めたもので、重複した記述もあったりして、かならずしもこれで「元型論」が体系的に理解できるわけではない。

ここで取り扱われているアーキタイプは、アニマ(男性のなかの女性性というか、女性へのセクシャルな妄想の投影みたいなもの?)、影(シャドウ)、老賢者、母、母娘、童児、トリックスター、精神など。
これらがどういう関係にあるのかは、今ひとつ分かりにくい。

が、ユングのユニークな思考プロセス、あっちいったり、こっちいったり、飛躍したりしながらも、ズボズボと本質的なところに深まっていったりを楽しむことができる。

ユングって、オカルトなイメージがあって、錬金術とか、宗教とか、神話の話しなどがどんどん引用されるので、なんだろう元祖スピリチュアル系というイメージがあるのだけど、ここにいるのは、結構、科学的、学術的な方法論、そして西欧的な合理主義を大切にする慎重な学者という感じ。

本当のところどう考えていたのかは分からないけど、スピリチュアルにとられることを警戒して、科学的に立証できることにもとづいて議論している、というニュアンスのことをしばしば書いている。

やっぱ、20世紀の前半なので、こういうスピリチャル的なものに対する拒否感というのは相当につよかったんだろうな。

というなかで、学術的な正確性を保ちつつ、人間存在の暗闇というか、無意識にズボズボと入っていく勇気がいいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年4月30日
読了日 : 2016年5月21日
本棚登録日 : 2017年4月30日

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