フーコーやデリダと並んで、難解な現代思想の代表として、名前のあがるアガンベン。
難しいのはフーコーでたくさん、という気持ちもあって、なんとなく避けていたアガンベンだが、コロナについての論考であるこの本を書店でパラパラとめくって、面白そうだったので、読んでみた。
哲学的な本ではなくて、一般の読者にむけたエッセイという形なので、基本的には、そんなに苦労なく読める。(コロナに関して短期間で書かれた雑誌などへの投稿記事を集めたものなので、同じ話の繰り返しがかなりあるが、その分、アガンベンの基本的な主張を繰り返し、確認できる)
今の「パンデミック」って、フーコーがいうところの生政治だな〜とか、規律権力だな〜とか、思っていて、フーコー が生きてたら、なんていうだろうなんて、妄想していたのだが、なるほどアガンベンは、「生政治」「生権力」につながる思想家だったわけね。
フーコーの「生政治」は、すごく面白いなと思っているが、残念ながら、フーコーはその議論を十分に展開する前に、別のテーマ「主体」に関心が移ってしまった。そういうなかで、なるほど、アガンベンがその議論をさきに進めていたわけね。「生政治」は、アガンベンを読めばいいんだ。
あと、私の好きなアーレント的なものがときどき顔を出すところもあって、なんだか、共感。
さて、この本の主張は、「新型コロナ」によって、まさに「生政治」的なもの、全体主義に通じる例外状況の政治が展開されて、われわれが「剥き出しの生」になっちゃている、という話し。いわば、「延命」的なもの、医学的権力≒科学権力が、キリスト教や資本主義の権力に打ち勝ったということ。
じゃあ、どうすればいいのかという処方箋を哲学者に求めてもしかたないことで、当然、そういう話しはでてこない。
主として一年くらい前に書かれたもので、その後の情勢変化を踏まえれば具体的な記述には、間違っていたこともあるし、その主張には疑問や同意できないものもあるが、「今、私たちはどこにいるのか?」と問われれば、アガンベンの主張に相当程度同意せざるを得ないかな?
- 感想投稿日 : 2021年4月21日
- 読了日 : 2021年4月21日
- 本棚登録日 : 2021年4月21日
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