花のあと (文春文庫 ふ 1-23)

著者 :
  • 文藝春秋 (1989年3月10日発売)
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本棚登録 : 1192
感想 : 114
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昨年末から読んでいたけど、ブクログ新年一冊目がこれ。
幸先がいいなと思わせてくれる、素晴らしい一冊。
町人もの、武家もの、芸術家の葛藤、結婚や家族、仕事、恋愛、出会いや別れなど、生きることの悲喜こもごもが見事に綴られており、それをこの配分で…?まさに短編集の妙…!と唸らされる。
解説にもあるように、シンプルな文章に、時折挟まれる自然や街の描写が本当に素敵。

藤沢作品を母語で読めて幸せだなあと、中村雅楽シリーズに続いて感じた。

面白かったのは、鬼ごっこ、旅の誘い、疑惑、冬の日、悪癖。
この一冊のなかに、映像化された作品が二つあるけど、どの作品も映像化に向いていると思う。

藤沢氏の言葉によって作られた美しい怜悧な世界が、多くの人の手によって噛み砕かれ、それが再度、美しい人間、自然、物語の映像になって立ち現れるって、たまらないことだなあと思います。語彙力。

(ただ、『寒い灯』だけは、なんとも現代の感覚では、めでたしとは言えないなあと思った。今の時代に書かれていたら、時代小説とはいえ、このラストは多分ないなあ。)

「旅の誘い」を読むと、杉浦日向子の『百日紅』が読みたくなった。
英泉、カッコよくなったね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年1月13日
読了日 : 2022年1月13日
本棚登録日 : 2022年1月13日

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