海賊女王(上)

著者 :
  • 光文社 (2013年8月22日発売)
3.77
  • (28)
  • (37)
  • (37)
  • (2)
  • (4)
本棚登録 : 360
感想 : 50
3

先日はじめて皆川博子を知り、その直後に読んだ、栩木伸明さんのアイルランド本にこの本についての言及があったので読んでみた。
皆川さんの文、まだあまり慣れないのだけど、ケレン味や飾り気がなくて読みやすい。
あまりに話がスパスパ進むのでちょっと驚く。
感情についての説明はさらっとしていて、情緒にうったえすぎたりせず、読者に思いを増加させるスペース(溜め)もないので、おおごとが起こるけど、なんだか冷静に読めるタイプの書き方。

本書はアイルランドに実在した海賊の女首領と、エリザベス女王との対決の話。2人は奇しくも同じ年齢。
上巻は海賊女王のグローニャが少女のころから始まる。
謎の経緯で従者になったアラン青年の目を通して描かれる。
なんか青年誌のマンガを小説にしたようなかんじ。
とにかく登場人物が多くて、ストーリーもこまかいので、必死についていくしかない。
こまかく、長く、ドラマもりもりで、大河ドラマのようでもある。
とはいえ、上巻の中盤まではけっこう退屈で読み進むのがきつかったが、だんだん面白くなってきた。

以下は上巻を読み終わった時点での感想&ネタバレですが、
まず、弟の存在。
上巻の中盤でアッサリ死んでいるとわかって驚く。
その状況は確かに可哀想なんだけど、死体もないし、本当に死んでるのかな。最後の最後に敵として出てくるような展開を期待してしまった。
下巻に期待。

ハードカバーの505ページ。これ名前間違ってないか。
クールミーンじゃなくて、ガルでしょ。
クールミーンはオウエンを護衛して帰っていったから、ここにいないんじゃないの。

役に立つようで立たない男、うまく書くなあと笑った。
この作品でいえばブローナン。

オシーンが私のアイドル。
たぶんスキンヘッドのイカついオッサンなのだけど、頼りになるし、頭もいい。下巻で彼が死んだらすごく辛いと思う。
しかし、オシーンもアランも、オシーンの娘も、グローニャの結婚に従って住む場所も移動してずっとそこにいるんだなー。大変だ。当たり前といえばそうだけど、主従関係はけっこう縛りが大きい。
特にオシーンの娘は故郷とも、主人とも父親とも離れて、1人、乳母業のために他国に残るのがかわいそう。
彼女が自分の人生を諦めて乳母をやることになる、と明言されているのがまだしも救いだが。

グローニャもまた、妊娠や出産を抱えつつのハードな海賊業、好きでもない夫を一応たてて、姑と侍女に育児は任せっきりなのでその負い目も常に抱えている。
こんな時代にも、こんなパワフルな女性でも、やはり女性であることで面倒がいっぱいあって心底泣けてくる。はあー。
下巻のラストには、グローニャのブローナンへの態度が完全に昔の男(うざい)になっていて笑った。
ハウのやってることは、アンパンマンに新キャラが出たときのバイキンマンを彷彿とさせるし。

ところで、皆川さん、主従萌えが強すぎんか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年8月23日
読了日 : 2023年8月23日
本棚登録日 : 2023年8月23日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする