神のロジック 人間のマジック (文春文庫 に 13-2)

著者 :
  • 文藝春秋 (2006年9月5日発売)
3.63
  • (54)
  • (122)
  • (123)
  • (23)
  • (2)
本棚登録 : 977
感想 : 129
5

久々にオチで素直に驚くことができるどんでん返しものの小説に出会えた。
通常どんでん返しと言えば叙述トリックもので、登場人物と読者の認識の齟齬から生まれるものが多い。しかし本作は登場人物すらも騙しているという点から、人によっては不満に思うかもしれないが、自分は絶妙に納得できるラインだった。
施設の正体の仮説として、探偵養成所や前世の記憶持ち、VR説などが出たときに、メタ的に推理するとどれも間違っているところまでは予想できるが、その流れで非現実的な状況にあるという考えになってしまっていた。しかし実際には現実世界の話で、まずい食事や近未来の電話ボックス、学校に潜む怪物などの謎もすべて解決される。
簡単に言ってしまえば、記憶を無くした老人が妄想に囚われたまま暴れ狂う話なのだが、作中に出て来る宗教戦争という捉え方が面白い。片方から異常に見えることは、もう一方からも異常に見えているということだ。自分が当たり前で正しいと思っていることが、実はファンタジーだと言われたらと考えると恐ろしい。ステラほど逆上するとは思えないけれど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月25日
読了日 : 2021年6月24日
本棚登録日 : 2021年5月9日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする