それから

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  • 2012年9月27日発売
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感想 : 48
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夏目漱石の作品は中学や高校の国語で「坊ちゃん」や「こころ」などを読んだくらいで、夏目漱石の作品と言えば、平易と正当の王道を行くような作品ばかりという印象を持っていた。だからこの作品を読んだときには夏目漱石もこんな大人な小説を書くのかと衝撃を受けた。よくよく考えてみれば、学校の教科書に取り上げられるものは、大人の事情がよく分からない中学生や高校生にも分かる心情・情景の描写から構成されたストーリーでなければならないのだから、このような錯覚に陥いるはずである。

さて、この「それから」であるが、一言で言えばとても切ない。物語が切ないというよりは、代助の感受性と道徳心と論理性が頭の中でぶつかり合い、悩みに悩みながら論理を展開し決断を導き出すところに、自分の抱いている切なさが共振した格好である。悩みとは欲求へのもがきである。もがくことを諦め、欲求を諦め始めたとき、悩みは切なさを帯び始める。代助の悩みに重ねて自分の悩みを増幅させると同時に、決断を持たぬ自分は切なさをも増幅させたのだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年12月11日
読了日 : 2013年6月27日
本棚登録日 : 2023年12月11日

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