2022年10月28日再読。自分が2010年に★5をつけていたが読書メモを残しておらず、当時何を感じたのか知りたくなり再読した。
自閉症の主人公の物語。
「ノーマル(健常者)」と「それ以外」という枠組みを軸に物語が進んでいく。
タイトルの「くらやみの速さ」は「光と暗闇」という枠組みに違う見え方の可能性を気づかせる。
物語の中で私は「ノーマル(健常者)」と「それ以外」の境目でその評価の反転や往復を何度もした。ニーチェ以来のニヒリズムについて言うまでもないが絶対が失われた世界で、悪に描かれがちな資本の論理まで含め、どれが正しということもないのだろうと思った。
ただ、常に、一人の人間の生きた物語があるということなのだろうと思う。
自身の人生についてもだが、できうることなら、それが、人の心を動かすものであればと思わずにいられない。
SFであり自閉症の主人公という「自分からの遠さ」を忘れる生々しさを感じた。
この物語は、読み手に、強く、今までと違うものの見方を、問いかけるように思う。
果たして10年前の自分は、どう感じたのか、改めて読んでも、実は思い出せなかった。素晴らしい物語であることは間違いないが、その時に何が心を打ったのか。
本書のテーマといわれる、「自己の連続性(アイデンティティ)とは」という問を、その意味でも考えずにいられない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF小説
- 感想投稿日 : 2022年10月28日
- 読了日 : 2010年5月13日
- 本棚登録日 : 2010年5月13日
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