かたちあるものからそうでないものへ。また、それらの間にあるうやむやな部分を穂村先生が’言葉’によってほじくりつつきまわした感じのエッセイ。
長嶋有・名久井直子両先生による〈偽ょっ記(解説に代えて)〉によれば、「(穂村さんは)俗な現実の中に実は無数にある形而上のものを、天使などのイメージを借りることで浮き上がらせようとしているのだ。」(p176)、「穂村さんは(中略)あらゆる形而下のものを形而下とは信じてない(自分自身の膀胱すらも疑っている)。」(p177)と解説されている。〈偽ょっ記〉の読みどころはまさにこの部分を理解することに尽き、これを踏まえて冒頭から読み返すと、踏まえる前よりもちょっぴり穂村先生の真意に近付けたような、胸を張りたいような気分になりました。
あ、〈偽ょっ記〉のもう一つの読みどころに名久井氏によるフジモトマサル先生っぽいゆる挿画の数々も挙げられるでしょう。ゆるいぞ!
本編はいずれも摩訶不思議なくっすり読める心地の文章。私が特に好きなのは〈5月29日 天使と車〉(p34)と〈12月17日 相談〉(p119)と〈1月12日 タイヤキ〉(p128)。
読めば読むほど味が出るタイプのスルメ本だと思います。そもそもタイトルの時点でめくるめく思考の世界が広がっているような。
9刷
2023.7.27
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
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- 感想投稿日 : 2023年7月27日
- 読了日 : 2023年7月21日
- 本棚登録日 : 2023年7月21日
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