海に降る
潜水調査船のパイトットを目指す女性と、亡き父が目撃したという未確認深海生物を発見したいと思っている男のお話
以下公式のあらすじ
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JAMSTEC(海洋研究開発機構)に勤務し、女性として初めて、有人潜水調査船〈しんかい6500〉のパイロットを目指す天谷深雪は、〈しんかい6500〉の建造に携わった父への不信から閉所恐怖症を発症し、船に乗ることができなくなってしまう。そんな時、広報部に中途採用の新人・高峰浩二がやってきた。高峰は、深海生物学者だった亡き父が18年前に日本海溝の海底で目撃したという未確認深海生物〈白い糸〉を自ら発見したいと公言する。そんな高峰に反発を覚える深雪だが、互いに父親への複雑な感情と、「〈しんかい6500〉に乗って深海に行く」という共通の想いを持つ二人は、次第に接近し、惹かれ合う。やがてついに、二人が〈しんかい6500〉に乗って深海に潜る日がやってくる。そこで待っていたのは、誰もが予想していなかった事態だった……。
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深雪が閉所恐怖症になった原因は、「世界で一番深い海に行く船を造る」と約束した父 厚志がアメリカで再婚してできた息子の陽生から「パパ、もう日本に帰ってこないよ」と言われたから
それまで、父が守ってくれていたような感覚が瓦解したため
多岐司令から、何故深海に行きたいのか?を問われた際の受け答えを見るに、やはり動機は「浅い」なぁと思う
設計思想も大事だけど、結局は運用に携わる人達の意識も必須ですからねぇ
神尾さんの意識も共感が持てる
一番好きなキャラは目山さんだろうか
セクハラ・パワハラが満載なので社会人としての評価はどうかと思うけど、研究者としてのあり方が正に理想ではある
深海についての魅力が所々に織り込まれている
「全海洋のわずか一割にも満たない日本近海が、生物のホットスポット。日本列島はあらゆるタイプの海に囲まれている。そういう希有な環境が世界有数の生物多様性をもたらしたんだ」
という日本列島の地理的特異性は希少でしょうねぇ
あと、深海はいつも食糧難だとか、古生物の存在や鉱石の可能性など、研究の対象はいくらでもありますしねぇ
こーゆー科学をベースに、人の想いを絡ませた物語は大好きだ
理系出身の作家さんならそんな話は書けるだろうけど
朱野帰子さんは理系ではないのに、ちゃんと科学の裏付けとロマンのバランスを取った作品に仕上げてるあたりに感服
皆川理事の閉会の挨拶の前のやり取りも、たしかに仮説に過ぎないんだけど、仮説はいくらあってもいいし、それを実証するのに必要なのは何か?どうすればよいのか?を考えるのには必要なものですからね
最後の展開に関しても、都合のいいものになってはいるものの、それまでに説明されてきた過程があるので、フィクションの結末としてはありですね
いやぁー、やはりこの手の話は好きだ
- 感想投稿日 : 2022年12月15日
- 読了日 : 2022年12月6日
- 本棚登録日 : 2022年12月15日
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