アズミ・ハルコは行方不明

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  • 幻冬舎 (2013年12月19日発売)
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今時も若者はこんなに静かに暮らしてるのだろうか。
あまりお金のない若者でのレス・ザン・ゼロだったらこうなるのだろうか。
(レス・ザン・ゼロ観たこと無いけど)

とても寂しく、物悲しさすら漂うくらしの若者たち。
でもよく考えたら自分もそうだった気がする。
四半世紀前の若者は、もっと景気良くお金をつかってはいたが
心中はこの小説で描かれるより貧しかった気がする。
貧しかった自分に気づけないほど貧しかった。

この小説に登場する若者は、今の息苦しさにうすうす気付いてなおもがく。
もがいてるつもりはなくても、居心地が良くなりはしないかと目配せくらいする。
ただ、状況が悪く、お金もあまりない。

昔の若者のとても馬鹿だけど金がそこそこあって、物欲に長けてるのと
どっちが不幸だろう。

失いかけている「何か」を感じてどうにかしようとする若者は
辛いだろうけれど、よく見えているし、幸せに近いところにいる。

女の子が元気で救われる。
女の子があまりに救われないと、見てられない。

とはいっても劇中の男連中のダメさ加減も大概だ。

しかしこのダメさも生き抜くための最低限の強かさの発露だろう。
もっとダメな人だと酷く引きこもるだろう。
やりがいを求めたり、昔の恋を引きずるなんて
まだ生の力が残っている。
残っている力であの通りというのが切ないのだけれど、まあしかたない。

恋愛体質の男の子は一人くらいしか居なかったようだけど
男の恋愛体質は多くないのだろうか。
昔は男女両方、だいたい恋愛体質だったように思っている。
そうでなかったとしても性欲か世間体で、ほぼ同じ動きをしていた印象だ。

今の子は、自分も他人も今もそれなりに見えてしまってるんだろうね。

そこはかとない諦観の物語。

このままでは終わりたくない。
終わりたくない物語。

昔とは様変わりした茫漠とした未来が
昔よりも、夜は冷たく昼は灼熱の、茫漠たる日々が押し寄せる。

終わらないロストジェネレーション。
踵を返すきっかけはまだ見つからない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年1月12日
読了日 : 2014年1月12日
本棚登録日 : 2014年1月12日

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