小川一水の長大なSF大河ドラマシリーズ、「天冥の標」のオープニングを飾る作品の下巻がこちら。上巻の興奮が冷めないうちに下巻を読み始めたら、面白すぎて一晩で読み終わってしまった。
メニー・メニー・シープと呼ばれる植民地惑星と、そこで生きる人々を丁寧に描いたのが上巻とすると、この下巻ではそれらの人々が「領主(レクター)による星からの脱出」という陰謀に対してどのように立ち向かい、そしてどのように散っていくかが語られる。
圧倒的な力を持つ領主とその軍に対して、主人公のカドムや<<海の一統>>の次期当主であるアクリラは、当初は小さな抵抗を試みようとする。しかし彼我の圧倒的な力の差に加えて、加速する星の荒廃を前にして、やがて彼らは全面的な戦争へと突き進んでいく。そしてそれは同時に、上巻で愛着を持って描かれたキャラクターたちの多くが死を迎えるということを意味する。
驚くのは、本作が単体の作品であれば絶対に許容できないようなエンディングを提示する事だろう。ネタバレタグをつけているとはいえやはりこの驚きはネタバレしないで読んでほしいと思うので詳しくは書かないが、この「メニー・メニー・シープ」を最後まで読むと、単にとてつもなく長い物語の序章でしかなかったことを痛感させられるのだ。
読み進めるにつれてむしろ謎が深まっていく本作を読んでしまったら、残りの作品を読まずにはいられない。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF
- 感想投稿日 : 2023年7月17日
- 読了日 : 2023年7月16日
- 本棚登録日 : 2023年7月17日
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