呑めば、都: 居酒屋の東京

  • 筑摩書房 (2012年10月1日発売)
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感想 : 18
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『菊と刀』のルース・ベネディクト然り、後継者に悩む稀少な伝統工芸を学ぶ留学生然り、そこいらの日本人よりもよっぽど日本の文化や歴史に精通した驚くべき外国人がいる。

この本の著者である、マイク・モラスキー教授もその一人。”赤提灯国粋主義”と自称するほど、日本の居酒屋文化をこよなく愛し、チェーン系ではない、個人経営のいわゆる大衆酒場への一本気を貫く。(コンビニのおでん売り場に安易に赤提灯を提げることに憤慨するほど)

タイトルからは一見呑み歩き探訪エッセーのひとつに見えるのだが、ダイガクキョージュとだけあり、読み手を知的刺激させる素晴らしい名書(酩書?)であった。
およそ外国人と思えぬ、非常に巧みでユーモアに溢れた日本語の表現を交えながら、東京という都市(の中でもとりわけ”辺境”と思われがちな町)における酒場およびその周辺空間の機能や役割を、充分な”フィールドワーク”をもって文化人類学的あるいは考現学的に考察してみせている。
戦後の闇市や赤線疎開区域、旧軍用地等、所以あってそこに長年構える酒場がもたらす”場の作用力”を、酒場での人間観察にとどまらず、その地域の郷土史文献や文学作品、関係者をあたるまでする行動力にあっぱれ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセー
感想投稿日 : 2014年5月18日
読了日 : 2014年5月16日
本棚登録日 : 2014年5月12日

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