とても優しく美しく、力強い話です。
まだ本編を読了したばかりの状態ですが、待ちきれずにレビューしました。
姉の身代わりとして瓜二つの少年が旧家の当主に嫁がされる―その話形は、BLでは定番です。
ただ、今回のお話、ヒロイン(受け・美少年水晶)のキャラが際だっています。とても好感のもてるキャラです。
幼い頃から不要のものとして扱われ、「死に神」と畏怖された若き有栖川家の当主誉。その誉に半ば騙された形で強引に「妻」にされた水晶ですが、
―あなたといる限りは仲良くしたい。
と、いつか帰ってくる姉のために、何より「夫」となった男性と心通わせたくて奮闘します。
料理を作ったり、掃除を頑張ったり、誉のために居心地の良い家庭を作ろうと頑張る水晶の姿は、限りなく健気で魅力的です。
きっと、男性なら誰もがそんな水晶に惹かれてゆくことでしょう。
―どれほど虐げられても、この屋敷から逃げようとしないのは、泣いたりしなかったのは、ただ一つ、心からの願いがあったからだ。どうか、誉と姉の結婚が幸せなものであって欲しい。今、水晶にできるのは誉に対して誠実であることだと思う。〈陽射しの当たらないひややかな暗闇があるなら窓を大きく開けて、明るく暖かな光で満たそう。そうして帰ってくる人を待とう〉。
抜粋ですが、私の特に好きな部分です。〈〉のところは、本当に素敵な表現だと思います。こういう考え方、心の持ち様が自然に普段からできたら、本当に良いなと思います。
物語りの冒頭は北の雪深い町から始まり、舞台は東京に移るけれど、全体的に雪のようにキラキラと輝いて、儚いながらもどこか力強さを感じる雰囲気が漂っています。また冒頭で母を病気で失った水晶を何くれとなく助けたイケメンエリート医師が失踪した誉の兄だったという設定もよく考えられていて、素晴らしい。
昨日、読了した「純白の条件」も同じ雪代さんの作品ですが、コチラは読者評価が予想外に低く、私としては意外な感じでした。
でも、本作を読んで、これだけの作品を書ける作家さんであれば、前作はファンにとっては少し物足りなく感じられるのかな、、、と理由が想像できました。
物語りを貫く「儚くて美しくも強い」印象は、水晶の人柄そのものであるように思います。
オススメの素敵な作品でした。
- 感想投稿日 : 2018年2月21日
- 読了日 : 2018年2月21日
- 本棚登録日 : 2018年2月21日
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