とても面白くて、また素敵なお話でした。
まさにハレークイン、ロマンス小説の良い意味での王道といえます。
ヒロインのハリエットは従妹のマーガレットと共に航海中、海賊に襲われ、奴隷商人に売り飛ばされました。
二人はカシムという宮殿長官に買われます。
カシムは褐色に焼けた肌の青い眼を持つ美男でした。
主君の世継ぎである王子に従妹が献上されることになり、嫌がって泣く従妹を見て、ハリエットは一計を案じます。
それは、結婚式の当日、自分と従妹が入れ替わるというものでした。
入れ替わりが露見、ハリエットは絶体絶命の窮地に立たされます。
怒り狂う主君と王子の前で、カシムが
―この女は私のハーレムに入れて、監視下に置きます。
と、宣言。
カシムにひそかに惹かれていたハリエットは死の恐怖に怯えつつも、一方で胸を高鳴らせ―。
カシムの正体は、実は元英国貴族の息子でした。深い事情があり、オスマントルコ帝国に流れ着いたのです。彼もハリエットと同じく、最初は奴隷として売れられてきたのでした。主君(カリフ、州総督?)の王子の生命を救った功績により、カシムはカリフから「息子」と呼ばれ、信頼されて第一の側近にまで上り詰めたのでした。
そんな彼のハーレムに入ったハリエットの運命は―。
結局、カシムのただ一人の妻となったハリエットは相思相愛で幸せな日々を送ります。自分の幸せは最早、祖国にはなく、ここ異国にあると確信したハリエット。彼の側にこそ自分の居場所があると信じ、ここで生き抜く決意をします。
更に、カリフが世継ぎの王子とカシムの「二人の息子」に位を譲り、共同統治を発表したことから、王子がカシムに対して苛立ちと憎悪を募らせ、結果としてカシムを出し抜いて功を父の前で示したいと焦るあまり、生命を失うという悲劇が。カリフは次の幼い世継ぎの王子が即位できるまで、カシムに即位して州を治めて欲しいと懇願。
そんなある日、英国にいるハリエットの弟が姉を救おうと乗り込んできます。ハリエットが敵に誘拐されたと思ったカシムは動揺し、手を尽くして探すのですが、、、
英国での予期せぬ再会、再び燃え上がる恋の炎、まさに最後のページを読み切るまで眼が離せないスリリングな展開でした。
また、カシムとハリエットという二人の主人公カップルは共に正義感が強く、良心に基づいて行動するところが似ており、嫌みのない魅力的なキャラクターといえます。
どんな興味深い小説でも、これだけの長編だとどこかで途中でページをめくる手が止まる―中だるみというのか、ちょっと面白くなくなる―ことがあるものですが、この物語りについては本当に最初から最後まで興味を持って読み進められました。
日常と現実からひととき離れて、異国やハーレムの世界に浸れます、お勧めの作品です。
- 感想投稿日 : 2018年12月22日
- 読了日 : 2018年12月22日
- 本棚登録日 : 2018年12月22日
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