光とともに・・・: 自閉症児を抱えて (1)

著者 :
  • 秋田書店 (2001年8月20日発売)
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小学生のとき、近所の友だちのおばさんが貸してくれたことが
この本との出会いだった。
そのときはまだ、自分がASDだということを知らず
「こんなひともいるのだな」くらいの感想しか
抱いていなかったように思う。

次の出会いは大学の図書館だった。
中学生編の途中までが置いてあって、暇を見つけては
繰り返し繰り返し、ときには泣きながら読んでいた。
わたしの抱えるくるしみと似ている、それなのにどうしてわたしは
幸子みたいな理解ある親に愛情たっぷり育てられなかったの? と。

小学生のときから早十数年。ASDの確定診断を受けて数年。
今でも冷静にこの本を読むことは難しいけれど
「ASDあるある」を、漫画というかたちでわかりやすく解説し
そして、幸子たちの目を通して光くんを見ることで
「障害のあるひとも、その周囲の人も、ひとりの人間だ」
という当然なことをごく自然に伝えてくれる本書はとても貴重なものだろう。

「治らない」と知り、障害受容できなかった幸子。
それでもまっすぐに「光の世界」を理解しようと覚悟を決める幸子。
これまでの「仕事で成功したい」という価値観から
「親として生きる」という価値観を得て変わった雅人。
そして、ふたりと周囲の努力が実を結び、初めて幸子が
「ママ」と呼ばれた瞬間。
保育園の卒園式で、きっと戸部先生が書きたかったであろう
光くんの将来をしっかりと発表した幸子の強さ。

育児はどんな子であっても戸惑いと混乱の連続だろう。
障害児だから特別に大変だと、一概に言い切れないほど。
だからこそ、ユミ先生の
「光くんにとって安全なことは他の園児にとっても安全」
という言葉は響いた。
これを安全から「安心」、「楽しい」、「わかりやすい」
そういう言葉に置き換えても通用する名言だなぁと。

この作品は、「大人になった光くん」を描ききるまで
続くことはなかったが、いろんなひとに
「どんな子どもも成長する力がある」という希望をもたらす
作品であることにはまちがいないだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人間・社会・宗教・教育
感想投稿日 : 2017年5月12日
読了日 : 2017年5月12日
本棚登録日 : 2017年5月12日

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