漂流女子 ――にんしんSOS東京の相談現場からー― (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2017年10月13日発売)
3.58
  • (7)
  • (10)
  • (10)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 122
感想 : 17
4

出会い系SNSには悪い大人(主に男性)が紛れ込んでいる。
多感な十代、中には小学生を食い物にしようとしている者たちが。
一般的には、家族がそういった大人たちから子供のみを守る砦になるはずだが、「優しい大人」に縋らざるを得ない子供たちも、確かに存在する。
そして彼女たちは望まぬ妊娠、中絶を繰り返し、さらに苦しい境遇に置かれてしまうのだ。

そんな少女たちに対して、自己責任、の一言で片付けて良いものだろうか。
妊娠させた大人、男性たちは何の責任も負わずに逃げおおせるのに。
少女の言葉、
「死にたいけど死ねないから、誰かに殺してほしいと思うの」
「これで1人で死ななくてもすむって思ったんだよね」
どうしてこの言葉を無視などできるだろう!

腹がたつのは既婚者との間に子供を作ってしまったケースだ。
確かに不倫は「悪いこと」だ。
しかし片方だけが悪いわけではない。
妊娠した女性に対し、「君の将来のことを考えたら、産まないほうがいいんじゃない?」(122頁)とは!
まるで他人事で、自分には非はなく、勝手に女が子供を宿しちまった、とでも?
机に拳を叩きつけたくなる。
中絶は心も体も傷つくのだ、どんなに心は割り切ったとしても。
中絶後後遺症症候群という症状を甘くみるべきではない。

人には事情がある。
その事情は、幼さゆえの無知や見通しの甘さであったり、家族に恵まれなかったり、障害があったり、実に様々だ。
それをまとめて自己責任と言ってのけることは容易いが、それで何かが解決すると言うのだろうか?
日本には子供は社会で育てるもの、と言う世界標準の考えから著しく遅れている。
家族の形は様々なのに、ありもしない「普通」を目指して皆が苦しんでいる。
多様性がこれだけ叫ばれている今、転換すべきは「普通」の概念なのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会科学
感想投稿日 : 2018年6月17日
読了日 : 2018年2月10日
本棚登録日 : 2018年6月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする