からくさ図書館来客簿 第四集 ~冥官・小野篁と夏のからくり~ (メディアワークス文庫)
- KADOKAWA (2015年9月24日発売)
京都の夏は暑い。
そして、祭りのために人がたくさん訪れ、人々も熱くなる。
本文中に、夏は生きる力がみなぎり、道なしと呼ばれるこの世のものではないものを見る人も増えるとある。
最近は暑すぎて、生きる力も削がれてしまうこともあるかもしれないが、それでも移ろう季節の中で人は生きている。
今回の物語は京都の祭りが舞台になっている。
からくり人形の仕掛けがどうなっていたのか、修繕とはどういうことなのか。
感心したのは修繕とは何か、ということについて述べた部分。
元の通りにすることが修繕ではない。
その、物自体が過ごしてきた時をも大事にすることが修繕であって、決して時を巻き戻すものではないのだ。
美術品などで、当時の姿が蘇る!なんて宣伝されているけれど、そこだけが修繕の意味ではないのだ。
時を重ねることは悪ではない。
ついつい、日々の中でアンチエイジング(最近はこの言葉が魅力的に聞こえるのだ)だなんだという言葉に触れているせいか、出来立てホヤホヤこそ至上のものと思いがちだが、それは思い込みだということに気づかされる。
さて、もう一つ気になったのが、茜が私はいい母親ではなかったかもしれない、と呟くシーンだ。
高みから見下ろして、誰かの子を、夫を死地へ向かわせたことを悔いているのだ。
人の在り方はその時々で変わる。
今正しいと思っていても、そうではないと気づく日が来るかもしれない。
それが苦しみなのか、喜びなのかは今は、わからないが。
日差しの強さもまたすぐに秋の風に吹かれゆっくり消えていくように、そしてそれが決して寂しいばかりではなく、実りをもたらすように。
日々は巡る。
人の心も巡る。
変化は恐れるものではない。
明日は明日の風が吹く。
- 感想投稿日 : 2015年11月12日
- 読了日 : 2015年11月10日
- 本棚登録日 : 2015年11月12日
みんなの感想をみる