モデルの世界
モデルの押切もえ氏による初の小説。
大手パン工場でアルバイトをしたり、売れない日々を過ごしたこともあると何かで読んだ。
そんな自身の経験を踏まえて描いた小説とのこと。
いわゆるシンデレラストーリーで、プロの作家ではない(何を持ってプロというのかは個々によるだろうが)為に概ね話の流れは予測がついた。
それでもやはり評価すべき所はある。
例えば後半で主人公の村田瞳がこんな言葉をかけられる。
「人と比べてたら一番にはなれないのよ」
これは著者にとっても大事にしてきた言葉だったのだろう。
モデルの世界は想像するにストイックな場所であり、また常に他者の存在を意識せざるを得ない場所であるのだろう。
それは我々の世界でも同様で、常に他者を感じながらいきている。
それは一概には悪いこととは言えないが、常に他者と己を比べることで自らを疲弊させてしまうことは害であることは間違いない。
私自身も他人志向型(現代人の特徴の一つだ!)で、やれ不細工だ、やれ能力が劣るだの、愚痴愚痴と日記に書き綴っている。
これにたいして、本書からそんなことは無駄だからやめろと一喝された気がした。
一方、これは不用だと思われたのが各扉にある詩のような心を綴った文章。
言い方は悪いが安っぽい自己満足の歌のようだった。
一言で自分の心を言い切ってしまうか、本文中の言葉だけで語った方が、主人公の迷いや悔しさ等の心の動きが明確になったのではないか。
目新しい展開ではないし、まだまだ改善の余地は充分にある。
今後文章を書いていくのであれば、いずれモデルという世界から先を描く必要があるだろう。
そうなってから改めて評価をしたい。
- 感想投稿日 : 2014年6月22日
- 読了日 : 2014年5月26日
- 本棚登録日 : 2014年6月22日
みんなの感想をみる