近未来の家族を描いた6編の物語。
「翼の折れた金魚」
子供をどう産んだか、どのような見た目か、そこに重点を置く「正当性」がテーマになっている。
コキュニアという薬を投与されて生んだ計画出産児は、正しい子供である。
そうではない子供はデキコ、デキオと呼ばれて蔑視の対象となる。
教師である僕も、その子供達の区分を当然と考え、デキコの親はなんの計画性もない馬鹿な親だ、と思っている。
しかし、そうだろうか?
出自に正しいも正しくないもあるのか。
そして正しく産んだ後、正しく育てられるとは限らない。
結末は、諦観が見え隠れするが、この結末が問いかける諦めは、SF・作り話なんて言えるだろうか?
「今夜宇宙船の見える丘に」
時々報道される、介護殺人。
あるいは死んだ親の年金でやっと暮らしていた人々の話。
本作はそんな「介護」の現実を落とし込んだ物語。
恐ろしいのは宇宙人だけではない。
すなわち本作ではこんな処置の記述がある
介護のために、悪くもない肛門を人工肛門にする(あちこちに排泄されないように)。
悪くもない足を切る(徘徊しないように、持ち上げやすいように)。
子が親に懇願し、親がそれを受け入れる。
考えることが多すぎて、寒気が止まらない。
愛を語るより左記のとおり執り行おう
葬式の話。
「おててのしわとしわを合わせて」「しあわせ〜」には迂闊にも笑ってしまった。
リモート葬儀もありうる今、遺体と触れないことがアリなのか?そんな疑問を呈されている。
人は死んだら傷んでいく。
昔ながらの葬儀、なんてめんどくさい。
だが、綺麗な部分だけを見ていることは正しくはない。
どれもあり得ない未来ではない。
出産も、介護も、死ぬことも。
人とは何か。そんな深いテーマが奥に流れる物語だった。
- 感想投稿日 : 2022年9月24日
- 読了日 : 2022年9月17日
- 本棚登録日 : 2022年9月24日
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