刑務所への関心
幸いにして、刑務所で過ごしたことはない。
行ったことはある。(ふふふ)
一般には縁遠いはずの刑務所だが、刑務官の話というのはなかなか聞く機会がない。
怪談話というより、刑務所のなかの姿を知るという意味では有意義ではないだろうか。
印象的なものがいくつかある。
若い人は永山事件など知らないだろうが、と著者は言う。
一般的にはそうかもしれない。
いやいや、法律を勉強していれば絶対にこの事件は知っているはずだ。
知らなければモグリだと教授は言っていたっけ。
この死刑囚と著者は会話をしていたというのが驚きだ。
これを機に死刑の基準が設定されたといわれているわけだが、なかなか、「事件、判例」としてしか認識できないので、生の声を聞いたというと俄然興味がわくのだ。
消印のない葉書という話はたいそう不思議な話だ。
誰が知らせたのか、一体どうして。
単純に考えれば誰か刑務官が知らせたというのが一番現実的だが、そんな野暮なことはひとまずおいておいて。
立ち直るきっかけとなれば、まあいいじゃないかと思ってしまうのは、甘い考えだろうか。
本書に書かれたことがまるまる本当だと思っているわけではない。
不思議なことと言っても、多くは人の手が介在している場合が多いからだ。
しかし、著者が出会った受刑者の記憶というものはその通りであろうと思われるし、著者が感じた恐怖や感動も日常とは異なる世界の出来事として、受け止める必要はあるだろう。
抑圧された欲望や、無理解が起こした悲劇など、刑務所に集まる人々は多種多様だ。
現在は高齢化が進んでいるという。
また、生活できず、再び舞い戻るものもいるという。
そういた現実を踏まえながら、刑務所という世界に関心をもつためのスタートとして読んでみるのも良い。
- 感想投稿日 : 2013年9月29日
- 読了日 : 2013年9月28日
- 本棚登録日 : 2013年9月29日
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