お砂糖とスパイスと爆発的な何か—不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門

著者 :
  • 書肆侃侃房 (2019年6月16日発売)
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本棚登録 : 1335
感想 : 78
4

フェミニスト批評のエッセイ25篇を収めている。
映画はあまり詳しくないので、あのシーンの、あのあたりから、と言ったあたりをつけることはできなかった。
しかし、ディズニー作品、「シンデレラ」や「アナと雪の女王」をあつかっていたり、ドラマ「ダウントン・アビー」などは見ていたのでそれについて触れた箇所は楽しめた。
可能であれば、本作に登場する映画や、書籍に目を通しておいた方が良い。
何をテーマに語られているのかわかる。
まあ、批評なので当たり前か。
カズオ・イシグロの「私を離さないで」について触れた箇所は興味深い。
カズオ・イシグロはノーベル賞作家の中では読みやすいし、故三浦春馬主演ドラマもあるので手に取りやすいかと思う。

さて、そうはいっても全部を見たり読んだりするのは大変な労力なので、もちろん本作だけでも良い。
キモいおっさん、とか、ブス、とかそんな視点で読むものも登場するので笑ってしまう。
どんなものかと言うと、
あの子にもう少し早く告白していればあの子は僕と結婚したはずなのに的思考。
きっも!
いや、丁寧に言おう。哀れで滑稽である。
無人島に二人だけになってもそれはないよ、という女性サイドの意見は完全無視。
文章だと、それはおかしいとわかるのに、実生活ではまかり通るのが不思議だ。
女性だけのユートピアの話も面白い。
男がいないと土木作業が云々、と言った批判を、著者が、君たちは道具としか見られなくて良いのかい?と一蹴するのは小気味良い。

物によっては、「私はそこまで思わなかったけれど」というものもあると思う。
それはそれとして良いと思う。
正しい考えがあるわけではない。
ただ、視点を変えて、色々な読み方をしてみるというのは、社会生活に必須だと思う。
自分が信じることを信じ続けるのは尊いが、相手を受け入れる度量も必要だ。
私は誰かを押さえつけていないか?
自らに問い、日に三省するような人でありたいと本書を読んで感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 評論
感想投稿日 : 2020年11月8日
読了日 : 2020年10月27日
本棚登録日 : 2020年11月8日

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