練習問題が多く、読み進めるのに時間がかかったが読み終えられた。
間違いなく、今後生きていく上で糧になる本だ。なぜなら、この本にある考えなしでは、生きていく中で身の回りで起こる現象や耳に入る言説を的確に捉え、筋の良い仮説を導き出すことは難しい。それぐらい思考の偏りを意識するにはうってつけの本だと感じた。
この書籍を通して、科学的思考がどのようになされているのか知ると、物事の捉え方が明確に変わる。たとえば、私は以前、「読書量が増えると年収が高まる」という仮説をデータを根拠にやや断定気味に論じていたブログ記事を読んだことがあった。その仮説に、私は言葉にしがたい違和感を感じていた。その時は、しばらく考えたのち「まあ自分の読書をするためのモチベーションになるか」と思い、安易にその違和感を飲み込んでしまっていたのだが、それから少し時間が経ち、この書籍を中盤まで読んだあたりで、真っ先に詭弁かどうかが気になったのが先のブログの記事だった。すぐに読み直してみた。すると、その仮説の根拠である複数のデータに、サンプル数の偏りがあることにすぐに気が付けた。
この書籍の威力を目の当たりにしたのはその瞬間だった。過去100冊程度本を読み、ここまで実利に働く本はなかった。大袈裟かもしれないが、何らか自分の人生の方向を変えている気さえする。
少なくとも、先述したブログ記事の仮説が否定されたところで私の読書をする意味は1つ薄れたが、この書籍と出会えたことで良書を読み学びを得る尊さが一段と高まった。この変化が疑心暗鬼になり希望を失って不幸をもたらすのか、素直に幸福をもたらすのかは分からないが、視野が俄然広がったのは事実で、著者一同に本当に感謝を申し上げたい。
最後に、選び難いが最も心に残っている学びを一つ上げるのならば、134pの「態度の問題」をあげたい。"反証への前向きな態度"こそが科学を前進させる正しい姿勢だという教えは、より仮説をたてることに勇敢に、そして自分の考えに固執せず他者の考えを柔軟に受け入れるという、自分にとって極めて重要な教えとなるだろう。
- 感想投稿日 : 2023年2月15日
- 読了日 : 2023年2月15日
- 本棚登録日 : 2023年2月15日
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