それでも、生きてゆく

著者 :
  • 河出書房新社 (2023年12月26日発売)
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本棚登録 : 166
感想 : 4
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『Mother』や『カルテット』等、私が大好きなドラマを手掛けている坂本裕二さん脚本のドラマが小説になった作品。
ドラマから小説になったからなのか、全て台本のような形式で書かれている(こういうタイプ初めてなので、何と説明するのが適切かわからない^^;)

〈ドラマ部分(全11話)〉、〈スケッチ(ごく一部のスタッフとキャストが読むために書かれた「それでも、生きてゆく」の構想文)〉、〈巻末座談会〉、〈ふりかえって〉の4パートで、頁数348ページとボリューミー。

◆あらすじ
7歳の妹を殺された兄 洋貴と、加害者を兄に持つ妹 双葉の二人が主人公。事件から約15年、被害者家族と加害者家族の長い月日を追ったサスペンス&ヒューマンドラマ。(と、ストーリー部分まで読了して思っていたけれど、巻末座談会を読んで、これがラブストーリーでもあった(確かに!)、むしろ制作陣の想いとしてはラブストーリーの比重割と高め?にびっくり!)
 
◆感想
被害者も加害者も未成年の少年犯罪という重いテーマであるが、会話シーンが多い(しかも洋貴と双葉のやり取りが淡々としている)為か、そこまで暗い気持ちにならず、一気読み。
作品紹介でドラマで放映された作品ということはわかっていたが、キャストは敢えて調べずに読了し終えて、主演が瑛太と満島ひかりの二人ということで(大好き)ドラマも観たい思った。

巻末座談会では、脚本の坂本裕二さん、演出の永山耕三さん、プロデューサーの石井浩二さん、主演の瑛太と満島ひかりによる、ドラマ制作の裏話を垣間見ることができ、こういう裏話を知るのも初めてだったので最後まで楽しむことができた。
(ドラマ制作の現場がかなり過酷で肉体労働だということもわかる…。)
本作を読み始める前は、気になるくらいの心持ちだったが、これからドラマの方を鑑賞するにあたっては、制作の裏側を知ったからこそ、作り手の想いを受け止める気持ちでより没入できたらと思う。

内容でいくと、巻末座談会でも話題に挙げられていたが、響子の長台詞は、字で追っていても、子を殺された親の生々しい心情が伝わってきて、これをドラマでは大竹しのぶが演じたら尚更心打たれるだろうなと思った。(今から観るの楽しみ)

一番最後の、坂本さんの〈ふりかえって〉もとてもよかった。坂本さんのこの作品に対して込めた想い、大事にされていたことが、最後に改めて伝わってくる。この、〈ふりかえって〉まで読むことで、作品全体をすべて読み切ったと思えるくらい、貴重なパートになっているなと思った。
いつ、自分がこうした悲劇的な事件の被害者・加害者になるかわからないからこそ、日頃から食べる、寝る、シャワーを浴びる等、基本的な生活習慣を身につけておくことが大切、ということは、作品のあらゆるシーンに散りばめられていて、そしてしっかりとタイトルにも繋がっていくというところが、改めて一つの作品としての完成度の高さを表している感じもした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年5月2日
読了日 : 2024年5月2日
本棚登録日 : 2023年12月26日

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