とにかく静かで不思議な作品。
「静か」は、夕方の日の落ちる頃、誰もいない住宅街で感じるような「怖さ」を感じる静けさ、もしくは作中にも出てきた『雨のプール』のような暗い静けさ。
3作の短編集だが、どれも読んだ後に「あれはなんだったんだろう…」と影を追ってしまうような気分になるものばかりだった。
ノスタルジーでありつつも、不思議な世界。そして、余韻が残る。
それにしても、登場人物がおかれている設定環境は、誰でも思い出せる、もしくは想像できるような場所なのに、固定概念をとりはらって客観的に見ると、そこだけ全く別の世界のように思える。
疑わないこの世界なら、妊娠したら「喜ばしいね。おめでとう」「赤ちゃんが産まれて嬉しいわ」、天井の染みは「雨」で、紺のチューリップは「珍しい」、給食は 「料理」、なのだけれど、一旦立ち止まって自分の中の心に正直になると実は自分の中では違ってたりする。
そんな視点が、よくある日常のなかに物理的に描写され、パラレルワールドを見ているような気分になった。
物思いに更けたいとき、静けさを感じたいとき、この作品をおすすめしたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年12月29日
- 読了日 : 2021年12月28日
- 本棚登録日 : 2021年12月25日
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