【2023年・第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作】名探偵のままでいて (『このミス』大賞シリーズ)

  • 宝島社 (2023年1月7日発売)
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感想を述べる前に本作『名探偵のままでいて』を手に取るまでの物語を紡ぐとしよう。さて、

「楓。煙草を一本くれないか」

私が行きつけの大型書店で本作が目に止まったのには2つの理由がある。1つは、とても綺麗な女性が本に口付けをする書影の美しさ。そしてもう1つは帯にデカデカと書かれた「(ナイナイの)岡村隆史絶賛!」の文字。

え………?!

「めちゃくちゃ(興味)そそられねぇ〜!!」

決して岡村隆史さんが嫌いと言う訳ではない(むしろ好きな)のだが、なんで芸人さんが帯に堂々と絶賛と出ているのかが不思議で仕方がなかった。大抵の大賞受賞作等なら有名作家や書評家の名が連なるのに、なんとも言えない違和感と抵抗感を抱いたのが本作の第一印象。

で私は何故か定価で買いたくないと変な意地を張り続け、とある日のブックオフで(クーポン込みで)500円引きで手に入る千載一遇?により、ようやく妥協して読み始めることになった。と、ここまでが私と本作の出逢いの物語。

さて感想ですが、めちゃくちゃ好き!!
安楽椅子探偵モノは、どうしてか煙草や葉巻を吸うイメージを持つが、本作のおじいちゃんも例外なくお気に入りの煙草と共に名推理を展開する。
しかし認知症を患い、幻視と現視(←私なりの造語)の狭間の中で苦悩しつつ、それでも孫娘と生家での介護生活を守ろうとする。

終章を読み終えるまで5章の事件が紡がれているが、いずれも終章への伏線を張り巡らせているのが良い。また知念実希人さんの『硝子の塔の殺人』と似て、様々な有名作やミステリ作家の名前が作中に登場し、読書好きの共感や興味を誘う所も良い。

さすがナイナイの岡村隆史さんと長き時間を歩んできた放送作家さんです。このミス受賞おめでとうございます!!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: レビュー済み
感想投稿日 : 2023年3月12日
読了日 : 2023年3月12日
本棚登録日 : 2023年2月25日

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