川上弘美って、
どうしてこうも怖いのだろう。
以前からそうなのだが、
年々その怖さが増していき、
先に読んでいた『森へ行きましょう』に真骨頂を見ていたが、
この作品で既にその片鱗が明確に現れていたか。
ふわっと夢のようでありながら、
生々しさと毒があって、
そのくせ冷たいくらいに俯瞰している視線がある。
それはグロテスクではない静かなものだからこそ、
とても怖く感じる。
確かにどこにでもありそうな町の人間模様に、
少しでも足を踏み入れれば、
そこにはひとりひとりの人生があり、
それは何にも変えられない超個人的なものだ。
その人生達が触れ合って、絡み合い、
通り過ぎて、離れていって、
そうしてまたひとつずつの物語が広がっていく。
始まりからゆっくりと積み重ねられた終わりの展開に、
背筋が凍る。
どうしてこんなに怖いのかと考えてみると、
きっとすべてが平等だからだ。
生きとし生けるものも、
意識も無意識も、
生と死も、
ひとつづきであるという真実を、
川上弘美は言葉にして、物語にしてしまえるから、
とても怖いのだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
川上弘美
- 感想投稿日 : 2021年8月27日
- 読了日 : 2021年8月27日
- 本棚登録日 : 2021年8月27日
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