続 まんが パレスチナ問題 「アラブの春」と「イスラム国」 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2015年8月20日発売)
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前作(2004年末)末尾で語り手のPL人とユダヤ人とが“民族”の無意味を鳴らしたが、’03年イラク戦争、’06年末フセイン大統領処刑にともない旧政権バース党を公職追放したことで「かつて有能だった官吏」がシナイ半島、および移民にまぎれてEU全体に拡散し“聖戦”ジハードを唱える「イスラム国」の原資となった。イラクは少数のスンニー派(世俗主義)が多数派(厳格主義)シーア派を押さえていたが(対立するイランはシーア派政権)、「自由な選挙」で選ばれたマリキ首相は米占領軍撤退後、スンニー派副大統領に欠席裁判で死刑判決…
 イスラエルは日本と並ぶ「アジアの(民度の高い)民主主義国」である。パレスチナが国際的に認知されれば、≪敵意の海≫に浮かぶユダヤ人の国に対して人口がより多い橋頭堡ができ…最終的には再度≪大離散≫する以外のユダヤ人は抹殺されることだろう。アラファトPFLP議長はポロニウムという前代未聞の手段で暗殺された(おそらくロシアに)/「米国はユダヤ資本に配慮してイスラエルの肩を持つ」とするがWW2最中にFDRが受け容れを拒否したのはトラウマでないか?ユダヤ人には石油のためにアラブに配慮していると見える。可哀そうは両方!
 エジプト・ムバラク政権は長期にわたる専制だったから、むろん腐敗していただろう、しかしそれを打倒することが幸福とは限らない。作者は馬鹿だから「非暴力で倒した」と賞讃するが、結局「銃にプラカードは勝てない」。さきにイランで「イスラム革命」で厳格主義政権ができ、中東で(サウジを除けば)唯一親米の政権が打倒されたことに何者かの意図が感じないでもない。≪民意≫は「大きい声」を出し手に銃を持つ者の側に傾きがち。アフガニスタンで秩序を回復したタリバンが支持されたように。昭和十五年に対米戦争が民主的選挙で支持されたように!
 文藝春秋2017年新年号「2016年の三冊」に4人もの人がフランス小説『屈服』を挙げた。極右ルペン当選を阻止するための妥協でフランス大統領にイスラム教徒が就任し≪融和≫政策がとられ…最終的に主人公がイスラムへの改宗を受け容れるマゾヒズム小説。「イスラム国(作者はISシンパと見られる)」に影響されたホーム・グロウン・テロを押さえるにはp127「移民の貧困や格差、宗教への差別をなくし、欧米が力で支配するのをやめることだニャ」フランスの第三子以降への手厚い支援はイスラム系住民の人口膨張となって脅威を与えている…
 苦い現実のあと、読者に舌触りが良いように「日本は奇跡の国」と治安の良さを賞讃する(忘れ物が盗られないなんてことは在日外国人が多い戦後にはありえない)。市民が銃をもつアメリカ社会は軍隊を文民が押さえる事の出来る政治システムでもある。戦後日本は軍隊を日蔭者とし卑怯にも防衛をアメリカに依存して「守ってくれるかな」とビクビクしているが。アメリカがさらに弱くなり、いっけん日本人と見まごう民族が乱入できるようになれば、生態系に外来種が入り込んで固有種を絶滅させるような事態になりかねないが?集団的自衛権に反対する勢力?

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 現代史
感想投稿日 : 2020年2月22日
読了日 : 2017年4月10日
本棚登録日 : 2020年2月22日

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