京都名庭を歩く (光文社新書)

著者 :
  • 光文社 (2004年10月16日発売)
3.54
  • (6)
  • (8)
  • (20)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 112
感想 : 10
4

京都で人気の金閣寺、銀閣寺、平等院から二条城、桂離宮まで、さまざまな名庭をテーマにした新書だ。
といっても単純に見どころや来歴を紹介したガイドブックではなく、「他界」「死」をテーマに、その庭園にまつわる歴史や時代背景、構成の意図などがわかりやすく興味深く論じられている。

時の権力者が庭や建物の造営に腐心した話、それによって虐げられた民衆が多数いたこと(平等院は藤原一族の極楽浄土へ逝くことを願って作られた建物だが、多くの民を災難で建設され、むしろ業を深めた、とか、銀閣寺はあちこちの仏閣から良い樹木や石を無理やり召し上げて民衆に運ばせて作られた、とか)など、知らなかったことばかりで面白い。

小堀遠州が西洋式の理論に基づいて庭を作ったこと(黄金比の使用、噴水、パースペクティブの活用など)、豊臣秀吉が作り上げた比叡山(秀吉が一時埋葬された場所)と豊国神社を結ぶラインを徳川家康が崩したこと(東本願寺を建立、鶴松の菩提寺だった祥雲寺を智積院にしてしまう)桂離宮と修学院離宮が二条城にとって鬼門と裏鬼門にあたること、など、好奇心を刺激される話が尽きない。

著者独自の説も多数あるため、どこまでが真実かはわからないけれど、こういった知識を持って改めて京都を訪れるとベタな観光地でも違った様相が見えて面白い。
つくづく京都には歴史の地層が積み重なっている、と思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 好奇心が満たされる
感想投稿日 : 2017年7月18日
読了日 : 2017年7月18日
本棚登録日 : 2017年7月18日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする