この本は本屋さんで見かけて装丁と手触りが大変に気に入って即買いした。
でも、「イッキに読んでしまいたくない」と思い、読む本が切れたときのつなぎに読んだり、トイレで長期戦に挑むとき(失礼)とかに、チビチビと少しずつ読んでいた。しかし、ハルキ氏の文章は極めておもしろく、そんな風にゆっくり読んだにもかかわらず、あっと言う間に読み進み、残り50ページくらいになって「ああ!もう読み終わってしまう!」と気づいてそのまま読むのをやめて、そして・・・要するに忘れていた。
先日、引っ越しをしていたらこの本が出てきて、「そっか、全部読んでなかったんだ」と気づいて続きを読み始めた。そして途中で「最初の方ってどんなこと書かれてたんだっけ」と少し戻ったら、いろいろおもしろくて、どんどん前まで遡っていき、結局最初から全部読んだ。
ああ、おもしろかった。
村上春樹さんは不本意だろうけど、私は小説よりだんぜんエッセイの方が好きです。もう何を読んでもおもしろいと思ってしまう。
(あ、でも「夜のくもざる」に入れる予定で書いてボツにした、という文章は驚くほどしょーもなくて驚愕した。村上春樹をしても、つまんない文章書くことあるんだと笑った。あれはボツにして正解かと)
どの文も全部印象的だったけれど(上記のくもざるは除く)、新人賞と初期のころに受賞したときの言葉がけっこうツッパっていて、ちょっと新鮮だった。そんなにあからさまにツッパるタイプの人じゃないと思ってたけどけっこうあからさまで。
そして、「どんな小説を書きたいか」ということについて、私が知らなかっただけで、わりときちんと丁寧に語っていたんだなぁ、と驚いた。しかも定期的に。けっこう細かく。
そこで語られていることは、小説を通して確実に読者に届いている、と思ったけど。どうかしら。
昔、友達がうちに泊まりに来たときに、しゃべりながら夫のワイシャツにアイロンをかけていたら、途中でその友達が驚愕したような表情を浮かべて、「ちょっと! あなたのアイロンのかけ方って、村上春樹みたい! すごい!!! 手際がよくてすごく上手!」と大絶賛された。
ええ? 村上春樹のアイロンのかけ方? 芝生の刈り方とかシャツの洗い方は書いてたような気がするけど、アイロンのかけ方とかあったっけ?とめんくらったのを覚えているけど、この本に収録されていた。ビックリ。久しぶりに褒められたことを思い出した。
アイロンかけは中学の時、母が手術することになってその前に父のワイシャツのために母から仕込まれた。村上春樹さんと違って、ソウルミュージックではなくていつも海外ドラマを見ながらかけてますけどね。
- 感想投稿日 : 2020年8月5日
- 読了日 : 2020年8月5日
- 本棚登録日 : 2020年8月5日
みんなの感想をみる