恋人たちはせーので光る

著者 :
  • リトル・モア (2019年8月30日発売)
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感想 : 20
5

一篇の詩の中にストーリーがあると思いました。
一篇一篇に物語性があって、読んでいて面白かったです。
この面白さ、楽しさどう表現したらいいのか。
次は一体何が出てくるのかな?と玉手箱みたいな面白さの世界でした。
タイトルも素敵です。
その中に何篇か、本当に吸い込まれていくように「これは好き」と思う詩がありました。
読んでいて、最高に楽しい、とてもスリルのある時間でした。

あとがきより抜粋
「言葉が本当に通じ合うことなんてない。一つの言葉が多くの人の心をつなげ、一つにするなんて、そんなホラーはないだろう。言葉は通じないものだ。(中略)目の前のその人が本当に言おうとしたことを完全に理解することなんてできない」



「氷河期」
百年後、すべてが凍ってしまって、
わたしひとり生き残った後の、ひどい気持ちを、
今、抱いていたいと思う。
人通りがいつだって多い、地下道で、わたしは立ち止っている。
ここで、わたしはそんな気持ちを守っていたい。
どうしてみんな死んでしまったの、わたしをおいて。
満員電車に揺られながら、泣いていたかった。
わたしは、誰とも友達でないから、
誰とも恋人でないから、誰のことも殺せてしまうのだ、
記憶の中で。

春の光が、まだ冷たさに競り負けて、
ぱらぱらと上空で砕けていくのが見える。
どうしても、愛は愛として成立してしまう。
歪んだ世界でも、歪んだ愛が、
まるで垂直な雨のように、降り注いでいる。
そんな、美しい偽りがあるんだと知っているから
もう誰のことも愛しているよ。



「果物ナイフの詩」「日傘の詩」「つめたくてあかるい」「約束した」「2月の朝の詩」「赤」もよかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 最果タヒ 詩集
感想投稿日 : 2019年12月15日
読了日 : 2019年12月15日
本棚登録日 : 2019年10月22日

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