阿蘭陀西鶴

著者 :
  • 講談社 (2014年9月10日発売)
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感想 : 85
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日本初のベストセラー作家井原西鶴のひととなりを盲目の娘おあいの視点からあぶりだしていく物語。自らを阿蘭陀=異端と名乗る西鶴、それを最初白々と見、自分勝手にふるまい家のことを放っておく西鶴に反発を覚えるおあい。しかし西鶴にお供して行く先々で出会う人々やおあいを育て上げるまでは断酒をすると宣言し、その後一滴も酒を飲まなくなったということを知るのをきっかけとし、親子の(というかおあい側)の確執は徐々にとけてゆく。
俳人としての西鶴がどのような評価を後世得ているのかは残念ながら私は知らないけれど『好色一代男』の世の介は知っている。市井の人と交わるうちにすかした俳諧よりも親しみを持てる草紙ものをと転換した西鶴。そのカンは大当たりし、年に何冊も好色ものが刊行されるようになる。一見単調な職業作家へのサクセスストーリーもまかてさんの素晴らしい描写による江戸の雰囲気とおあいの存在とが華を添えて絵巻物のような小説になっている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本・エンタメ
感想投稿日 : 2015年3月31日
読了日 : 2015年3月31日
本棚登録日 : 2015年3月31日

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