愛の渇き

  • 文遊社 (2013年10月29日発売)
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感想 : 9
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病的に自分を愛する、自分を愛すること以外なにも知らない母リジャイナの元に産み落とされたガーダ。リジャイナは未だに(50年代の作品ですが)城に住んでいるような貴族で、姫のように育てられ、自由を許されず、親の決めた相手と結婚させられる。昔はこれでもきっとうまくいっていたのだろう。けれどその現代から見ると異常な教育の仕方と環境はそのままリジャイナの人格に投影され、極度の子供嫌い、セックス嫌悪、それどころか自分には誰にも指一本触れてほしくないという極端な嗜好を作り上げることになる。そんなリジャイナだからガーダが生まれても一度も抱くことをせず、里子に出し、夫が絶望してピストル自殺を遂げてすぐ、出産の世話をした青年医師と結婚し、今まで通りの生活を送る。
しかしそれも破綻し、なにかが足りないと思い、気まぐれに里子に出した子を連れてアメリカ人の資産家とホテル住まいを始めるも、子供には一切かまわず、資産家である夫と連れ子を自分の貴族ならではのオーラと美しさにひれ伏すように巧みにコントロールし、奴隷のようにしてしまう。自分は誰も愛さないけれど強引に愛を獲得する。(事実男どもは彼女を愛している)
そんな母親に育てられたガーダはいつもおどおどし、存在を消し、誰とも交わらずに幽霊のように生きている。奇跡的に恋をするも、破綻する。自己肯定感ゼロ。入院先で看護婦にやたらなつく様子が痛々しかった。家族にのけ者にされ、結局恋人からも一瞬の愛情しか得ることができなかったガーダ。思えばこの作品に出てくる人間はみんな人間として決定的な部分が欠けている。そのすべてのしわ寄せがガーダに来てしまった。かわいそうなガーダ。小さいころの私を見ているようだった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外文学
感想投稿日 : 2015年2月13日
読了日 : 2015年2月13日
本棚登録日 : 2015年2月13日

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