戦国の陣形 (講談社現代新書)

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  • 講談社 (2016年1月20日発売)
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感想 : 32
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タイトルは「戦国の陣形」だが、要点としては日本の戦国時代には実態としての「陣形」なんてなかった、という本。
会戦に際し、兵の集団を決められた形に配置して運用する(それができるよう訓練する)陣形は日本の場合、大陸との戦闘を想定した律令制下には一時、存在したものの、結局大陸との大規模戦闘は白村江以降の古代では発生しなかった。
蝦夷勢力等と戦う上では会戦を想定している陣形は有効ではない(相手が集団ではなく散兵であるため)。
騎馬に乗った武士は運用としては散兵に近く、鎌倉~室町も陣形らしい陣形はない。魚鱗の陣・鶴翼の陣みたいな表現は出てくるが、密集せよ・散開せよくらいの意味できちんと決まった形はない(そもそも、領主ごとの集団や、「俺についてこい!」「おう!」みたいな固まりで戦闘してるので、司令官の下で秩序だった展開なんてしていない)。

きちんと形の決まった陣形を導入したのは武田信玄・山本勘助であることは確からしいが、その陣形も有効に機能した記録はない。
むしろ信玄に一矢報いるために村上氏が生み出した、旗本の下に兵種ごとに一定数の兵を揃えて、それを組み合わせて運用する(その組み合わせの力で一点突破して信玄を攻撃する)先方の方が有効で、その戦法はそのまま上杉氏に取り入れられた上、北条・武田にも波及し、後に豊臣政権⇒徳川政権にも取り入れられる(領主ごとに、各兵種を決められた数拠出することを義務付ける⇒それを兵種ごとにわけて再編成して運用する)。
江戸時代以降に「なんか陣形ってのがあったらしい」と机上で研究が進むが、日本でそれがまともに機能したことなんてなかったらしいぞ、と。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 批評・ノンフィクション
感想投稿日 : 2016年3月26日
読了日 : 2016年3月26日
本棚登録日 : 2016年3月26日

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