頭木弘樹さん編のアンソロジー。たいへん粒ぞろいだった。
筒井康隆「最悪の接触」
話の通じない話を書いたら、究極の、ぶっとんだ断絶を味わわせてくれる筒井康隆。あまりにもその断絶ぶりが激しくて、声を立てて笑ってしまった。
山田太一「車中のバナナ」
『食べることと出すこと』でも紹介されていたエッセイ。
視点の鋭さに感嘆する。
アイリッシュ「瞳の奥の殺人」
これはたしかに絶望だわ。わかっているのにどうにも阻止できない……後半の展開よかった。
安部公房「鞄」
頭木さんがあとがきで「学校では『著者はどういうことを考えて、この作品を書いたでしょう?』というような読み方を習いますが、そんなことはむしろどうでもいいことで、自分にとってその作品がどう心に響くかということのほうが、よほど重要です」と書いていて、ほんとうにそうだなと思った。
李清俊(イ・チョンジュン)「虫の話」
この作品がいちばん絶望が深かった。また宗教というものの、欺瞞性のようなものも描かれていて、はじめから終わりまで慄然となる短編でした。
シャーリイ・ジャクスン「すてきな他人」
これ、ほんとうはどうなんだろう? でもきっとそんなことは関係ないんだ。なんとも深淵をのぞく物語。
ほかの作品も、頭木さんの解説も、一様に充実していて読みごたえがありました。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年5月3日
- 読了日 : 2021年5月3日
- 本棚登録日 : 2021年5月3日
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