絶望図書館: 立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2017年11月9日発売)
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本棚登録 : 678
感想 : 64
5

頭木弘樹さん編のアンソロジー。たいへん粒ぞろいだった。

筒井康隆「最悪の接触」
話の通じない話を書いたら、究極の、ぶっとんだ断絶を味わわせてくれる筒井康隆。あまりにもその断絶ぶりが激しくて、声を立てて笑ってしまった。

山田太一「車中のバナナ」
『食べることと出すこと』でも紹介されていたエッセイ。
視点の鋭さに感嘆する。

アイリッシュ「瞳の奥の殺人」
これはたしかに絶望だわ。わかっているのにどうにも阻止できない……後半の展開よかった。

安部公房「鞄」
頭木さんがあとがきで「学校では『著者はどういうことを考えて、この作品を書いたでしょう?』というような読み方を習いますが、そんなことはむしろどうでもいいことで、自分にとってその作品がどう心に響くかということのほうが、よほど重要です」と書いていて、ほんとうにそうだなと思った。

李清俊(イ・チョンジュン)「虫の話」
この作品がいちばん絶望が深かった。また宗教というものの、欺瞞性のようなものも描かれていて、はじめから終わりまで慄然となる短編でした。

シャーリイ・ジャクスン「すてきな他人」
これ、ほんとうはどうなんだろう? でもきっとそんなことは関係ないんだ。なんとも深淵をのぞく物語。

ほかの作品も、頭木さんの解説も、一様に充実していて読みごたえがありました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年5月3日
読了日 : 2021年5月3日
本棚登録日 : 2021年5月3日

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