『サクリファイス』の続編。
前作終盤にスペインへ渡った白石君のツール・ド・フランスでの戦いを描いた作品。
フランスのチームに移籍し半年でチームの解散が決まり、
自分の将来と目の前のレースに翻弄される白石君。
相変わらず思いやりがあり、繊細。なのに頑固で不器用でまっすぐ。
競技の世界では同じマイノリティであることで絆を感じているチームエース、年若く才能溢れるライバルなど、青春の香りを感じる。
『サクリファイス』より人間関係や物語の構図がわかりやすく、
かなりスポーツ物に寄っている。
ミステリ的要素はほぼない。
あっと驚く、というものはないけれど、
前作同様に白石君の心の動き、勝利のために私欲を捨てて犠牲になる葛藤が丁寧に描かれていて、主人公が勝者となる定番の構図よりも心動かされるものがある。
自分の名は人々の記憶や歴史に刻まれることがなくても、
才能のある人をサポートできることを誇りとして生きていける人。
役割ゆえに世に出ないのだろうが、最近こういう人たちのことが気になっている。
スポーツという、誰もが頂点を目指すというイメージの分野で黒子に徹するメンタリティというのはどんなものか。
興味は更に深まった。
人間ドラマの部分も面白いけれども、レースシーンもいい。
登場人物たちの息苦しさと疲労、興奮を感じて、一緒に走っている気分になる。
それでも走り続けるって、どんな仕事でも、人生でも大切なことだなあと思った。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文芸
- 感想投稿日 : 2012年3月4日
- 読了日 : 2012年3月3日
- 本棚登録日 : 2012年3月4日
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