「文系学部廃止」の衝撃 (集英社新書)

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  • 集英社 (2016年2月17日発売)
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感想 : 43
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「文系は役に立たないが価値はある」という言葉に対し「役に立つ」と言い切り、ずんずん進んでゆく本書を読んでいると、学ぶことへの勇気が湧いてくる。

理系の知を、確立した価値体系の中で問題提起(目標)と解決を短期的に達成することを目指したものとおき、文系はそれに対して価値そのものを見つめる(「価値とは何か?」という問いを有する)とおく。

確かに50年後、100年後の社会が現在と同じ価値基準で動いているとは思えない。(50年前と今がそうであるように)
そしてまた、自身の50年後(生きていれば)を考える上でも、この意味をよく分かっておかなければならないように思う。

筆者も言及しているように、今後、日本社会は超高齢化社会を迎える。
子どもが少ない中で日本はどのような「成長」を遂げるべきなのかではなく、中年~老人がいかに生きるべきなのかを考える時代がやってくると思う。

この本では大学の成り立ちや、では何故、理系が優遇され文系が淘汰されてきたのかというパワーバランスについても触れられていて面白い。
神という価値、国という価値を経て、今はやはり学ぶ者自身が価値の取捨選択のしやすい時代になったと思う。
(教養は国としての価値を体現したもので、国境を越えることが難しいという言葉が印象的だった。確かに。)
そして今後、大学で学ぶ者の年齢幅を大きく増やした時、やはり筆者の言う文系的な知にまた戻って来ざるを得ないような気がする。

AI台頭と英語の実用化が巷を賑わせている中、プログラミングや英語四技能が青年教育の中核を担っていくようだ。
とすれば、そうした社会の「価値」の次には一体何がやってくるのだろう。

三年ほど前に出版された本なので、続いて最新作も読んでみたいと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2020年
感想投稿日 : 2020年1月22日
読了日 : 2020年1月26日
本棚登録日 : 2020年1月22日

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