初の太宰作品。終始暗い雰囲気が続き、とにかく救いがない。戦後の華族制廃止の中で落ちぶれる旧貴族という設定はニッチ過ぎないかと思ったが、本作が不朽の名作として語り継がれるのは、栄華を誇った人間が没落していく様子を描いたストーリーがいつの時代も人々の関心ごとだということを示しているのだろうか。ただ、自分もこの類のストーリーは割と好きな方で、没落の中でおかしくなっていくかず子や直治の絶望的なストーリーを飽くことなく読み進めてしまった。終盤でかず子が「革命家」になろうとするのだが、このことは、寄り縋るアイデンティティ(貴族という身分、身分に紐づく財産)が全て無に帰すという、まさに「革命」と呼べるような事態へのアンチテーゼなのだろうか。
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- 感想投稿日 : 2023年5月2日
- 読了日 : 2023年1月4日
- 本棚登録日 : 2023年1月4日
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