この本の著者小野和子さんは、出版当時85歳
50年もの間、民話を語る人のお話を聞きに訪ねている人
民話を研究したり、再話したりする人たちは、民話を語ってもらって聞くことを「採集」「採話」という。
昆虫採集の採集と同じ字だ。
でも、小野さんは、「語ってくださった方」と「語ってもらった民話」は、切り離せないと考え、「採訪」という言葉を使う
その言葉の通り、この本では民話そのものだけを語るのではなく、それを語ってくれた人、その人が住まう家や土地、そしてその人につながる人々をすべて含めて語っている。
民話とは、それを語る人を通して、営みが反映されて生まれるのだということを知る。悲しいお話だけでなく、どこかユーモラスな、おおらかな話の背景にも、実は厳しい生活があってこそ生まれるものもあることを知らされることとなる。
昔話の定番のような「おじいさんは芝刈りに行きました」の背景にあるものを初めて知った。私は何と無知だったのか……と思う。
そうか、物語とはこうして生まれるものなのだと知る。
この本を読むことができて、本当に良かった。
きっとこの本は、繰り返し読むことになる本なのだと思う。
物語に携わる人は、読むといいと思う。
特に、「読み聞かせ」に関わる人には読んでもらいたい。
きっと人に読んで聞かせることが、そのあと違ったものになると思うから。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年4月10日
- 読了日 : 2021年4月10日
- 本棚登録日 : 2021年4月10日
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