今回は本のタイトルが「さらば深川」だ。 これは嫌な予感しかしないではないか。寂しい理由なのか悲しい理由なのか、もしかしてもしかして嬉しい理由なのか、 、、
結果、悲しいし、悔しくて腹も立つけど嬉しさもあったりして。 何とも複雑な気持ちでエンディングを迎える。
さてここから、次巻以降、伊三次とお文はどんな展開を迎えるのだろうか。
ところでこの巻にも宇江佐さんご本人による"文庫のためのあとがき”が収録されていた。 (これはこの後の文庫本も毎回収録されているのかな?
そこに、『すでにお気づきの方もおられると思うが、本一冊につき、 伊三次に一歳、年を取 らせている。 同い年のお文も当然、その通りである』 『第一作目の伊三次は二十五歳だった。本書では二十七歳となっている』とあった。・・・気づいていなかった。
これは私の悪い癖なのかもしれないが、特に時代小説では元号がピンとこないのもあり、季節が巡っている様子は、月の表記や気候の描写などで感じつつも、実際に年月がどれくらい経っているのかは気にしていないことが多い。
そうか、 今回のお話では、2人は27歳なのかと改めて振り返ると、この時代は、女性が18, 19歳にもなれば結婚している時代だったことを考えると、おみつの結婚もあり、深川を離れるお文の様子は、より切なく感じられる。 新たにやってきた女中のおこなと、2人で「花嫁衣裳を着たかった」と話し、空を仰いでいたシーンも思い浮かび、切なさが増す。
しかし今回は、切ないことの続く話の終わりに、ほんの少し嬉しくなる要素もあり、お文にも、もちろん伊三次にとっても、今後は幸せがやってくるのでは、と期待したい。
あ、それから 不破が、予想外にきちんと伊三次に謝罪していて、うっかり伊三次と一緒に 涙が出てしまった。この時代に武家が町人に頭を下げるなど、実際は褒められたことではな いのかもしれないが、深くて素敵だった。
- 感想投稿日 : 2022年5月10日
- 読了日 : 2022年5月10日
- 本棚登録日 : 2021年11月15日
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