黒子のバスケ 8 (ジャンプコミックス)

著者 :
  • 集英社 (2010年8月4日発売)
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本棚登録 : 2417
感想 : 75
5

一番の見どころはやはり海常VS桐皇の試合において、黄瀬が青峰に憧れるのはやめると宣言するところ。
黄瀬の名言1位となった「憧れるのはもう…やめる」というこのセリフだが、実はこれが結構重たい。

自分が体育会系の部活に所属していたということもあってか、この言葉をつぶやくまでの過程がとても苦しいものだっただろうというのは想像できた。
何かを始める時って、誰にでも何かしら”きっかけ”が必要。それが黄瀬の場合は「容姿良し、高身長、スポーツできて女の子にモテモテ、なんでもやれば何でもできてしまう」という私から見れば実在しているだけで嫌味な男なわけだが、その黄瀬が今までで一番興味を惹かれた存在というのが青峰なわけです。
青峰は黄瀬と出会った当初、今のなんかこう悪人面とはかけ離れた”ただ純粋にバスケが好きなバスケ馬鹿”の少年で、持って生まれた才能と幼い頃からのバスケとの親しみの中から生み出された彼だけのバスケスタイルを確立して、バスケを楽しんでいた。
青峰は、「自分はなんでもできてしまう」という感情を抱いていた黄瀬にとってはおそらく初めて「この人スゲー」と思わせた人物。その”すごい”から、青峰に憧れ青峰のやっていたバスケに興味を持ち始めてバスケにのめり込む黄瀬。

自分の体験から言うと、私も憧れの先輩と試合をしたことがあって、この人に勝つことでこの人を超えたいと思った時がありました。
でも黄瀬の言うとおり、
「憧れの人には負けてほしくない」
んですね。
憧れの人が自分なんかに負けてほしくない。強くあり続けてほしい。
そういう気持ちもやっぱりあって、勝ちたい・超えたい、でも負けてほしくない・憧れの存在のままでいてほしいという葛藤が生まれる。

黒子のバスケはこういう、人が成長する瞬間を熱く描いてくれているところが好き。
なかなかね、できない。憧れの人に対して超えてみせるなんて言えないもんです。少なくとも私は言えなかった。恐れ多くて。

でもそこで宣言することで、今までの自分の中での葛藤を捨て去り、ただ一心に「青峰に勝ちたい、勝つんだ」という気持ちを持って試合に臨んだ黄瀬。その男気を見たらこっちも泣いてしまいました。

そしてね、ここまで読んでみてホントに感心したのは黄瀬の凄さ。
漫画だからというのはおいといて、本当に他の人の技をコピーしようと思ったら、その人独自の技となるとこれを修得するなんてのは現実問題難しい。
その人独自の技ということは、その人の体格や生まれ持った運動機能、つまりは筋肉の付き方や瞬発力・持久力・跳躍力・敏捷性etcとその人だけ持っているその体から出される技ということ。その人の性格や思考から繰り出される唯一無二のもの。
それをコピーして自分のものにできる黄瀬ってとてつもなくありえない、凄い選手と思うんです。

桐皇の主将・今吉が「彼(黄瀬)だけの武器がない、ただのバスケで青峰に勝つのは不可能」というのに対して、海常の主将・笠松さんが言った一言「技術をマネて身につけるということは学ぶということ、つまりは成長すること」という言葉も確かにその通り。
学ぶという言葉が「真似ぶ」という言葉から生まれたというくらい、学ぶにはまず真似することから始まるんです。

黄瀬は一見、人のプレイを見てその人の技の真似をしているだけのように思えるけど、黄瀬は彼自身、「学ぶ」ということの基本をこなしているだけ。
しかも付け加えると、常人にまず人のプレイを見ただけで真似をすることなんてできない。もうこれだけで、黄瀬の凄さがわかってくると思います。

そして人のプレイをマネできるほどの身体能力を備えている。誠凛との練習試合以降、今まで以上に練習を積んでいるというのを知ると、最初「嫌味なイケメンだ」という印象しかなかったのが、尊敬に値する素晴らしい選手という風に自分の中で変わった。

これからも黄瀬はきっと多くのことを真似て学習して成長していくと思うので、その瞬間をこれからも見ていたい。そう思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2012年8月8日
読了日 : 2012年8月8日
本棚登録日 : 2012年8月8日

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