愛でもない青春でもない旅立たないのなら
一体なんなんだろう。
でも確かに、この物語では以上のものはすべて否定されている。
そこに残されていたものは、空虚というには
少々グロテスクな自意識の視線と、
それを跳ね除けてあまりある馬鹿馬鹿しいほど神々しい人生だと
言わんばかりのラストだが、これも正直ポーズだ。
その地点に至ってなお、視線は冷めている。
むしろ、それでもなお他者がいるということの
恩寵の方が際立っているが、そこへは旅立たない。
それは不条理な殺人よりも一層タチがわるい気もする。
それは作品の価値に対する評価ではない。
よくこんな物語にしづらい部分を取り上げたものだと感心さえする。
まぎれもなく人生の忘れ去られた裏路地のような物語である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説・物語
- 感想投稿日 : 2012年4月2日
- 読了日 : 2012年2月27日
- 本棚登録日 : 2012年2月20日
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