『烏に単は似合わない』を一作目とする八咫烏シリーズの第二巻。
前巻は八咫烏たちのトップ、日嗣の御子である若宮の奥方候補たちを描いた物語でしたが、今巻はその裏側(こっちが表かな?)として、若宮を中心とする宮殿での跡目争いにまつわるお話でした。
私としては断然、こちらの話の方が好み。
前巻も面白かったんですが、どうもキャラクターたちの性格のブレが気になったり世界観に入り込めなかった部分があったので。
あと最後に急に登場して、探偵よろしくすべてを解決する若宮がなんだか鼻持ちならなくて、好感持てなかったし…
この巻はまず主役の雪哉が好ましい!
本当は優秀なのに事情があってぼんくらのふりをしていて、素直ではないけれど心根は真っ直ぐで、そこがすんごい可愛い。
そして前巻で若宮がなぜああいう態度だったのかもわかってスッキリ。なるほどいろいろと考えてのことだったんですね〜。
世界観もより緻密に作り上げられて、今後もこの八咫烏たちの世界に浸りたいと思わせてくれる作品でした。続編も読もっと。
そしてこれは前巻からなんですが、この作者は人の心のダークな部分を描くのが上手です。
人を愛する心とか、忠誠心とか、一般的に美しいもの、素晴らしいものと讃えられる感情。
ある登場人物たちの「自分のために」人を愛し、「自分のために」人に忠誠を誓うその姿は、利己的で醜くて背筋がゾッとするけれど、ある意味人間らしいとも言えるのかもしれないなー…
ラストもめでたしめでたし、とは言いづらい余韻を残すものだったので、どう次巻に繋がるのか楽しみです!
- 感想投稿日 : 2022年8月9日
- 読了日 : 2022年8月9日
- 本棚登録日 : 2022年8月9日
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