弥栄の烏 (文春文庫 あ 65-6)

著者 :
  • 文藝春秋 (2019年5月9日発売)
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本棚登録 : 1888
感想 : 137
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前巻『玉依姫』の裏側、山内に住む八咫烏視点でのお話。
第一部の最終巻でもあります。

全編通してずーっと不穏な雰囲気が漂っていて、読み進めるのがちょっとしんどかった〜。
各エピソードに勢いがあって面白いのはすごく面白いんですけどね。

それにしても、あのとき大怪我を負ったのはあの人で、そして、亡くなったのはあの人だったんですね…

彼が亡くなったのはすごくショックでした。

もともと好きなキャラクターだったっていうのもあるし、私はどうしても雪哉に感情移入して読んでしまうんですが、
彼は雪哉の隠れた人間らしい優しさや甘さを「わかってるよ!」って言ってくれる唯一の人物だったんですよね…

作中で、人外が人外であるためには認識してくれる人の存在と本人の自覚が必要ということが何回か書かれてましたが、
雪哉が人間らしい良心を失わないためにも、わかってるよと言ってくれる彼の存在が絶対に必要だったんですよー!

このあと、どんどん闇落ちしていく雪哉がもう心配で心配で…。

最初の頃と比べてどんどん人間くさくなっていく若宮とは対照的でした。

若宮は、
「大将はいかにうまく人を殺すかが求められる存在」であると悩んでいましたが、実際にそれを参謀として実践していたのは雪哉なんですよね。

若宮がわざとそう仕向けていたわけではなくても、もう少しそうせざるを得なかった雪哉の心に寄り添ってあげてほしかったなー、なんて。

最後の最後でようやく少しだけ人間らしい心を取り戻せたものの、今後どうか再び雪哉に寄り添ってくれる人が出てきてくれますように。

このまま第2部も読みたいけど、、この作家さんは(いい意味でも悪い意味でも)ものすごい勢いで予定調和を裏切ってくるので、ちょっと読むのが怖いよー!読みますけども。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年9月4日
読了日 : 2022年9月4日
本棚登録日 : 2022年9月3日

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