希望が死んだ夜に (文春文庫 あ 78-1)

著者 :
  • 文藝春秋 (2019年10月9日発売)
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一人の少女が死に、一人の少女が容疑者として逮捕された。
だけど少女は動機を一切語ろうとしない。

一見節点のなさそうなこの二人の少女の間に、一体何があったのか。一体なぜ殺害することになったのか…

「わかんないよ。あんたたちにはわかんない。何がわかんないのかも、わかんない」

※※※

貧困がテーマのこの作品。
すんごく重たかったけど読んで良かった。

相対的貧困、という言葉を聞いたことがあります。住んでいる地域の水準からみて、大多数の生活水準よりも貧しいことを言うそう。

いわゆる生き続けることすら難しい「絶対的貧困」に比べると、すごく発見されづらい問題らしいです。

たとえば、スマホを持っていたりメイクしているのだから、そんな余裕があるのなら大丈夫でしょと言われる。

でも現代社会の学生にとっては学校生活にもバイトにもスマホは必須だし、メイク道具なんて百均でも購入できます。

そうして一見貧しく見られないため、子供たちが連日バイトで寝不足で学校に行けない、もちろん進学も難しい、結果超低賃金の仕事にしか就けない、などの負の連鎖から抜け出せない問題が見過ごされてしまってるんですよね。

「そんなの結局本人のやる気と努力次第じゃないか」
こう言えるのは、努力をする余地のある人間だから。努力をする余裕すらない子供たちもいる、という描写がガツンときました。


読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年9月29日
読了日 : 2022年9月29日
本棚登録日 : 2022年9月29日

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