母は死ねない (単行本)

著者 :
  • 筑摩書房 (2023年3月13日発売)
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本棚登録 : 363
感想 : 31
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子どもを持つ決意、持たない決意。そして、子どもを産んだ後の親としての喜び、哀しみ、悩み、後悔…
親となった今では、子どもに関する悲しいニュースを聞くのが辛く、涙が出てしまうのだが、この本はそのニュースの裏にある当事者の親の気持ちをリアルに綴っている。実際に起きた事件についての取材や、筆者の周りの人との会話に基づいて書かれているので、まるで自分の目の前でその人が語っているかのような臨場感がある。
子どもを育てる上で、「親は死ねない」というのは、本当にその一言に尽きる。法律上や経済面の責任だけでなく、愛情の面でも、「私はこの子が死ぬまで死ねないし、この子が私より先に死ぬことは決してあってはいけない」と常に(無意識に)気を張り詰めていたことを認識させられた。
そして、子どもを持たないという選択をした人の気持ちも、同時にわかる、と思ってしまう。子どもを育てることは、それほどに責任の重い仕事なのだ。
でも、母親はかくあるべき、という決めつけから、自分を解放することも、子どもと自分を幸せにするために必要なのだと思う。母も一人の人間で、決して強くはない。そして、子どもは母とは違う人間で、思い通りに動かすことは不可能だということ。それを大事にして、一人の人間同士として向き合えた時に、お互いに信頼し合える関係になれるのだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2023年1月25日
読了日 : 2023年1月25日
本棚登録日 : 2023年1月8日

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