数年前に亡くなった作家、森村桂さんの二番目の夫である三宅さんが書かれた手記。
一晩で一気読みだった。
狂気、カリスマ、アダルトチルドレン、読後、この3つの言葉が浮かんだ。
10代の頃にフアンだった私には、衝撃的すぎる内容だった。
が、一方で、彼女の異様なまでの天真爛漫さや、繊細さからくる危うさや、突飛な行動、それらと表裏一体の翳を感じていた私は、すんなり納得がいった。
依存心が強く、人をすぐ信じてしまう彼女の弱みにつけこんで、次々と現れる悪意を持った羊達。
騙されていることに気づきもしない彼女。むしろ積極的に騙されてしまう心の弱さ。愛情を与えず育て、奴隷の様に彼女を使う母親。そして、彼女が奴隷のように操る弟子たち。歪んだ信頼関係、歪んだ主従関係、依存的な生き方、彼女のカリスマ性。。。
その上、純真さが仇となり、この世界では生きることが難しかったのだろう。彼女はきれいなお花畑でお花を摘んで生きることが似合っている。
三宅さんは、最後の最後まで、精神を侵され蝕まれた狂った彼女を献身的に支えた。
守りきれなかったと記されていたが、これ以上彼女は生きていられなかったのだろうし、これ以上生きていたら、医者の言う通り彼の方が先に亡くなっていただろう。
しかし、本当の死因は「言葉通り申し上げることのはばかれる…」とだけしか記されておらず、想像のつくようなつかないような、、、フアンの誰もが知らない彼女の裏の世界をここまで世に公表(暴露)するのであれば、その死因もきちんと読者に伝えるべきだと思った。
彼女の夫である彼の視点からの内容ではあるが、彼女の母親はどう感じているのだろう。どこまでが真実で、どこまでが彼自身の<正当化>なのかは分からない。が、少なくとも、彼女は苦しみながらも生きたいように生き、優しすぎる夫にとことん大切にされ、幸せだったのではないかと思う。
彼女の壮絶な人生はこれで幕を閉じたが、三宅さんは残された雑務に追われる。それは悪意を持った人々との対峙だと想像する。彼は重いうつ病を患ったというがよくなったのだろうか。まだ若いので、残りの人生が幸せであるといいのにと思う。
「桂のケーキ屋さん」を再び手に取り、懐かしくてまた忘れんぼのバナナケーキを焼きたくなった。
- 感想投稿日 : 2012年5月27日
- 読了日 : 2012年5月27日
- 本棚登録日 : 2012年5月27日
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