初鹿島田さんにて胸かきむしられるような名前の付けられない痛くて苦しくて、その合間に一瞬だけ訪れる極上の救済体験をして、目がチカチカした。
独特な文章センス、彼女の独自の言語感覚に初めは振り回されて、自分が何を手にし、何を読んでいるのかさえ分からなくなるような気がした。
語られている二人ではない「二匹」となった少年が身体に受けた痛みや衝撃を共に感じ、彼らが走り続けて向かっていった場所へと同じように追っていったはずが、気付くと振り落とされて迷子になってしまったような感覚だった。
けれど何とか食らいついて鹿島田さんがぶん投げてくる文字に触れ続けていると、突然眼前に、私に干渉もしないが、私を当然のように受け入れてくれる優しい場所が広がっていた。
そこで「二匹」の狂犬たちは、自由に走り回っている。
決して安全そうではなく、頻繁に目を覆いたくなるような危うさが、そこには常に蔓延している。
そうしてこれからも優しくない世界と彼らの未熟な心そのものが、彼らが狂犬になって作った楽園をぶち壊してしまうかもしれないという予感が氾濫している。
しかしもう大人になった私は、そんな彼らを羨ましいと思ってやまない。
もうこれ以上は近づけることはないが、ヒトの座標空間から外れた彼らだけの言語を使い、ヒトには出来ない新しい接近から生まれた二匹の距離で、どこまでも純粋で無垢な心で命を護ることに貪欲な彼らを、出来ることならもっと強く感じて、共にこの危うい世界を狂って走り回りたいと願ってしまうのだ。
ここまで暴力的な小説に出会ったのは久々で、読み終えたのは一ヶ月も前なのに、こうしてまた手に取るとぞくぞくが止まらなくなる。
そして、これは新しい文学だ! なんて思った感動が再び蘇ってまたぞくぞく。
二匹の動物の姿は、私の中にまだ痣のようになって残っている。
そこに触れると痛くて、少し気持ちよくて、なにこれ、ほんとたまらない! 状態になってしまうのだ。
「聖なるバカに福音を!」
ああ、鹿島田さんが大好きになってしまった。
- 感想投稿日 : 2012年8月15日
- 読了日 : 2012年7月4日
- 本棚登録日 : 2012年8月15日
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