人間の条件 (ちくま学芸文庫 ア-7-1)

  • 筑摩書房 (1994年10月5日発売)
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本棚登録 : 2749
感想 : 118
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本当に読み応えのある深い本でした。本書は20世紀の哲学者ハンナ・アレントの代表作の一つで1950年代に書かれました。訳者の志水氏も最後に述べているように、どちらかと言えば難解な本ですが、アレントの言葉の定義がわかってくると徐々にスラスラと読めるようになってきます。志水氏が最後に本書の概要をとてもわかりやすく説明されていますが、読者の皆さんはまずは自力で本書を読み進め、最後に自分の理解を補う上で志水氏の解説を読むと良いかと思います。

本書は人間の「活動的生活」を「労働」「仕事」「活動」の3つに分類し、アレント氏がそれぞれを定義づけます。そして人類の歴史(古代ギリシャ以降)において、この3つの序列がどう変化してきた、そしてその理由は何か、を解き明かしています。最初はどう違うのか良くわからないかと思いますが、アレントの言葉の使い方に慣れてくるにつれ、本書の後半ではだいぶ違いが理解できます。

アレントは本書の最後の章で「アルキメデスの点」の話を出します。これは何かといえば、人類は地球に拘束されている生き物であるにもかかわらず、地球を離れて宇宙のある点から地球を見ることが出来るようになったことを、ガリレオ・ガリレイの地動説をもって説明しているのですが、私はアレント自身も「アレントの点」なるものを持っていると思いました。しかもこのアレントの点は、空間的に遠く離れた点という意味だけでなく、時間的にも遠く離れた点に自分をおくことが出来る、という意味で時空間を超えた点だと思います。自身を古代ギリシャにおくと、いかに現代社会(20世紀)の常識が非常識であるか、が描写できるというようなことがたびたび登場します。アレントは非常に視野が広いだけでなく深い(つまり事象の根源を突き止める)ことができる卓越した人物であったと感銘を受けました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年4月30日
読了日 : 2018年3月15日
本棚登録日 : 2023年4月30日

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